津島から南に67`ほぼ下田から神津までの行程の倍となる絶海の弧礁「イナンバ島」は今ほど渡船の性能が優れていない頃は、数時間の長い航海をへてたどり着く秘境であった。釣師の憧れの場所イナンバ遠征と言う大イベントにおいて私達が渡船をお願いしたのは神津島の最速船「賀寿丸」さん。日頃神津では、他の船をあっけなく置き去りにし一番磯を欲しいままにする「黒い船:賀寿丸」を恨めしく眺めていた私達にとってはちょっと複雑な心境であった。

前日の昼頃に連絡を入れて遠征の実施の最終確認を入れると、「天候が今日の調子ならもしかしたら乗れるかも知れない」という見解を頂き、夜中の東名高速をひた走り下田に到着した。海老名で落ち合ったメンバーのテンションは初めて神津を訪れたときのように高く。早くも大物との対戦を食事をとりながら交し合っていた。「前回、前々回と私が神津島で良い釣果に恵まれたとき海老名で牛丼を食べた」というジンクスを話すと「BIGONEの特攻隊長;しみちゃん」は先に海老名で食事を取っていた私に「お願いだからご飯粒一つだけ残しておいて!」なんて言う。それほどまでにイナンバに賭ける思いは強い。それもそのはず、遠征を繰り返す今の私達だがシミちゃんとは「いつかはイナンバに行こう!」と約束をしていた。それがついに実現する日がやってきたのだ。


寿丸が下田に現れたのは早朝3:30。近くで見るとやはりデカイ。早速船長に挨拶をして今日の具合を聞くと「この風じゃ〜表本場はちょっと無理かなぁ、この人数じゃ裏本場に全員は乗れないからね〜とりあえず本島(神津島)まで走って状況を確認して考えましょう」とのことになった。早速、荷物を積み込む、荷物入れの「カメ」もでかくて深い・・階段までついてる!バタバタと荷物をつんだらみんな一斉に船室になだれ込んだ「うぉ〜なんじゃこりゃ〜!!」一昔前に流行った「カプセルホテル」のような作りの船内・・談話室と呼ばれる渡船前の控え室・・豪華すぎる!!私達は3つある船室の中の真中の大きな部屋を確保して横になって出発をまった。神津で降りるほかの釣り客を乗せていよいよ出発・・手元の時計は4時を回る頃であった。

下田港を離れ湾内から沖合いに出たところで加速しだした賀寿丸。「お〜!速い!!!マジで速い!!」明らかにパワーがあるのが分かる。しかも横揺れがしない!多少のうねりも船が裂いてしまうのか縦の揺れも穏やかで突き上げる感じのショックはない。「これが本当に船に乗ってるの?」まるで大きな観光バスに横になって乗っているような快適さ。凪だったのも手伝って賀寿丸はぐいぐいと前進し仮眠をとろうと横になってちょっとだけ目を閉じたら「グゴゴゴ」と減速を始めた「?????」そとを眺めると見慣れた神津港の桟橋が見えた「おいおい!もうついちゃったの?」時計を見ると5時であった。。所要時間は1時間を切っている・・通常の神津までの航海の半分の所要時間である。ドリームチャレンジャーと大きく書かれた横の文字は過大な表現ではなく「この船なら離島の釣りは変わる!」と本当に感じた瞬間である。船に弱い「ゴエ」が珍しく目を赤くして熟睡していたようで起こしても起きないほど良く寝られたそうだ。。

神津島で止まりの神津の釣り客を降ろし船長が状況を確認し私のところにやってきた。「これならいけるかも知れませんね〜ただ潮周りが速い潮が入っているから朝のうちは表は乗れないと思います。向こうにいって見なきゃ分からないけどあんまり期待は出来ませんよ!それでもイナンバに行きますか?」と言われた。万が一イナンバを目指して乗れない場合は「銭州」へ戻ることになる。今日は幸い銭州にも人は入っていないようなのでそのまま行けばこのメンバーで銭州を貸切に出来ると話していた。しかしイナンバを回ると1時間以上時間をロスすることになって勿体無いと言うのだ。早くも迫った【決断の時】メンバーに訪ねてみようと船室へ行くと「どう!!?いけるの!?いけるの!?」と目を輝かせている。その表情を見て迷わず船長に「皆、乗れなかったら諦めると言っています。側でイナンバという場所がどんな場所か見てみたいそうなので行って見ます」とお願いした。船長は「それなら分かったよ!そんじゃすぐに出るからね準備して!」と言い放つとすぐに桟橋を離れ船の向きを替えて走り出した。なじみの本島周りの一の首を左に見て右には祈苗群島を見ながら賀寿丸はイナンバへ向けて速度を上げる。

 
 

見えた!アレがイナンバだ!

方デッキを開放し加速していく・・神津島が見る見る小さくなっていくと左後前方に三宅島が見え始めた。三本岳がよく見えている・・めざす藺難波島は御蔵島の先。まだ遠い・・船の中では今日の釣りの談義に華が咲く。仕掛けのこと〜ポイントのこと・・とりわけポイントについては未知の部分が多く。何の情報ももたない。イナンバを知る人に言わせると激流が流れる場所と口を揃えて教えてくれる・・そしてもう一つは、離島としては比較的近い場所に位置するので、一見渡礁のチャンスはたくさんあるように思われるようだ、確かに八丈島や小笠原などに比べるとかなり近いと言えるのだが問題は渡礁率。黒潮のど真ん中に当たるときなどは「釣りにならない」と言わしめるほどの激流が流れ、その流れで波が立つ、つまり風や低気圧の影響が無くとも、激流のパワーで波が立ちポイントが波に現れると言うのだ、

賀寿丸は三宅島を過ぎたあたりで漆黒の海に船体を乗り入れた。あたかも「川でも流れている」ようにはっきりと流れが違う潮が目の前に広がる。それまで鏡のように穏やかであった海が一気に豹変し水面は風も無いのに波が立ち大きなウネリが出ている。見渡す海の色は、青とは表現できない見たことも無い黒い流れ・・黒潮の中に入った。先ほどまで穏やかであった船内も多少揺れが生じ、下田から寝つづけていたメンバーも目を覚ましだした。「藺難波・・まだ見えないの?」そう言われて当たりを見渡すも何も見えない。いつのまにか左後方に御蔵島が見えていた。それ以外は何一つ見えない・・水平線が続くだけの海が見えるだけ「もうそろそろなんだけどなぁ〜」「あんだけ奇妙な岩だから目立つはずだけど・・」そう誰かが言ったと同時に賀寿丸が減速を始める「もしかして・・・」後方の談話室にいたメンバーや寝室にいたメンバー達が一斉に船の前方に注目する。

見えた!!!藺難波だ!!・・・・・・・

あまりにも奇怪な容姿に開いた口が閉じない・・「なんじゃこりゃ〜!」「すげ〜〜」
それ以外の言葉が出てこないスケール・・痛く感動する私達の目の前を憧れの藺難波が少しずつその雄姿と全貌をあらわした。