行逃げ切り作戦は白メジナに阻まれあっという間に1時間が過ぎた。それでも明らかにキープサイズというサイズを上げていたのは数名で時計回りに次のポイントへ移る。私の隣りに入っていた林さんは最初からこのポイントになったので高いところからその釣りを見ていた私には林さんのねらい目の意図が見えた。根の際を狙っていたが上から見るぶんには潮は明らかに根をかすめて根の向こう側でいい潮を作っている。ポイントを移動し一投目にそのポイントへ投げ込むとウキが馴染むと同時に竿が大きく引き込まれた。そのポイントでキープサイズを確保できなかった林さんは大きな声を上げる。「お〜〜い!まじかぁ〜!」足元の冷や汗モンのシモリ際のやり取りを何とか交して水面を割ったのは、目測で40aを軽く超えるメジナ。「お〜〜良いグレやぁ!!」と鈴木さんと林さんが激励の言葉を投げかけてくれる。完全に水面を割り腹を見せたメジナをタモ入れしようと左手にタモを手にした瞬間・・・プチッ。なんと先ほどのやり取りで手前のシモリにハリスが擦れていたようであっけなく切れてしまった。先行逃げ切りには絶好のメジナであった。どんなに名手を相手にしても運良く先に型を揃えられれば勝利できる可能性もあったのだが私の運はここで尽きたように思えた。結果的には最後の最後まで僅差で特別抜け出た選手がおらず1尾の勝負の様相を見せていたカドの戦いであったが、終了20分前に突然潮が変わりカドでは最高の潮が流れ初めて最後に左カドのポイントでその潮を釣れた「林さん」が予選を勝ち上がった。林さんのラストスパートはまさにトーナメンターのソレであり・・的確に潮を捉え数をまとめる釣りはさすがであった。

 

残念ながら予選敗退となった私はその後磯を変更し恩馳の平根へ移った。凪の日限定の恩馳の超一級磯である平根はその名のとおり平たくて低い磯である。入江さんと鈴木さん、そして私が降りた最後に先ほどまで大会の運営で忙しそうにしていた柳下会長も平根に降りることになった。磯釣りの大ベテランであり関東のメジナ釣りの先駆者でもある柳下さんと竿を並べて出せることに先ほどの競技よりも何十倍も緊張した。平根はジロハチ方面からの潮で本来の潮とは反対の潮が入っていたが、そこは流石に超一級磯。左かどの奔流を攻める鈴木さんは一時間あまり入れ食いが続いた。私はその上に当たる場所に釣り座を構えたが潮が鈴木さんを回り込んで流れるため本流を流すと迷惑になるので上手く仕掛けが流せないで40aほどのメジナ一枚だけを上げてまどろんでいた。

 

下会長は鈴木さんが流す奔流筋の内側の引かれ潮を攻めていたが、私が近寄ると「なんだがイメージが湧かないよぉ」と言ってきっぱりそのポイントを諦めた。どこに行くのかと見ていると裏手の浅場へ場所を移動した。向かい風が強かったのだが会長がその場所に立ったときに風はぴたりとやんだ。柳下さんが入った場所は裏手の浅い場所、遠目に見た感じでは潮もさほど入っていないように見える。しかも根がきつく万が一メジナをかけても取れる確率が低そう・・・まぁ私なら間違いなく選ばない場所。

 

奔流側にじゃんけんで勝った鈴木さんが入って私はその上で竿を出していた。柳下さんと入江さんが竿を出していたのは丁度強い向かい風が吹いていて釣りにくい場所。しかも水深の無い浅場で図に書かれていないが根だらけの場所。私は正直この場所で仮に尾長メジナが食っても取れる気がしないしこの場所は狙わない・・・しかも右から左に緩く潮が流れていることを探すことも出来なかったであろう。柳下さんはこの場所で狙いすましたように尾長メジナの40aクラスを連発させていた。圧巻はそのやり取り40a後半の良型を掛けたときのやり取りは、私から見たらまさに神業であった。「引っ張りあいっこしたら切れちゃうよ〜〜」と言いながらやり取りする柳下さんの竿捌きは簡単に表現すると「魚に引っ張らせる」ことだけで竿を曲げるやり取り。私達のように魚と引っ張り合うようなやり取りではない。「魚が引っ張る分だけ竿が曲がる」というやり取りつまり魚が怒って暴れないのでこんな根回りでも驚くほど素直に魚が寄ってくる・・・。さしずめその様子は魚の仙人様が魚を寄せているように見えた・・・。

んなやり取りを目の前で繰り広げているときに「釣りなんかしていられない!」思わずそう思った私は竿を置いて柳下さんの後ろに回ってその釣りを眺めていた・・すると「こっちおいで!」と声を掛けてくれて「ポイントは分かるね、あの流れに乗せれば食うよ」と変わってくれた。アドバイス通りに仕掛けを流すといきなり竿が引っ手繰られた。「ひえ〜〜〜!!(>O<)」強烈な締め込みに磯の先端から尻尾までも引っ張りまわされようやく神津サイズのメジナを仕留めた。あまりにも優しくあまりにも簡単にやり取りしていた柳下さんの神業を身をもって感じた瞬間であった。「掛けた魚と引っ張り合わない、つまり魚が引く分だけ竿を曲げて魚の走りが止まったら常に魚の頭をとって優しく寄せてくる」基本中の基本ではあるが、自分では出来ていたと思い込んでいた。エキスパートのお手本を目のあたりにして目からウロコが1万枚くらい落ちた・・・・(^^;....

 

結局、私達のクラブからはハセぴょんが予選を抜け出し、私の磯の勝者「林さん」も破り、翌日の準決勝へコマを進めた。私達が神津島を紹介し、それ以来どっぷりと神津の魅力に取り付かれ、昨年から年間150日も神津へ通う彼の情熱が報われた瞬間である。いくらポイントを熟知しているからとは言えそれだけでは中々勝負には勝てない。ハセぴょんの釣りの技術の向上が著しく向上したと素直に感心している。「こうなったら狙うは優勝だよ!」そうハセぴょんと堅い握手をして宿へ戻った。私達のクラブの戦績は、PUU組はブッチギリの抜け出しがあって敗退。ゴエ組は「関東メジナ研究会の平井さん」がブッチギリで抜け出し敗退。クロさん組は「昨年の覇者、高野さん」が僅差を制して抜け出し敗退。イッシー組は規定サイズの釣果が無く早掛けで抜け方がおり敗退であった。

 

央丸と大明丸とに分かれ宿に戻って神津の温泉へ出かけ夜の宴が始まった。海央丸では、千葉粋釣会の方々と大いに盛り上がりビールと焼酎が次々に酌み交わされた。まさかの初戦敗退の竿友会の松本会長は「私は明日は選手でも釣り人でもない!おぱさん!!今日は飲むぞ〜!」と凄い勢いである・・そこへ高野さんが入って釣り談義に大いに花が咲き、エキスパート達のつりの哲学や理論などを聞いてまたまた目からうろこが1万枚ほど落ちた・・私のめん玉はウロコだらけで曇っていたことに大いに気がつく。高野さんは明日の準決勝に備えて酒は控えていたが参加選手との交流を積極的に行い最後まで宴に付き合っていた。釣り人としてだけではなく一個人としても素晴らしい方だと感心する。意気投合し「プライベート釣行」を約束して携帯電話の番号を交換し床についた。明日は選手ではない釣り・・クロさんとマンツーマン勝負だぁ!