丁度、1年前のこの時期。私は竿というタックルをすべて入れ替えた。無残に根元からひん曲がり、3番まで海中に突っ込んで元に戻る反発力を完全に失った竿はあまりにもショッキングな光景で私の価値観を完全に変えた。もちろん、道具が悪いわけではない。その道具を使いきれない私の技術の問題と言うことは重々分かっている。

しかし、その私は、技量のなさを道具でカバーしてもらおうと言う横着な釣り人ゆえ、技量をカバーしてもらえない竿に少しばかり不満を感じた。言われるまでもなく、「そいつ」を仕留める事ができなかったのは竿のせいではない。竿の性能のせいにしたいと言ういい訳である。それくらい悔しいバラシを経験した。それくらい執着した敗北を味わった。それがそう・・・・去年の今頃、この場所・・伊浜、トンガリ。

今回、同行したのは、ご存知BIGONEのPUUちゃん。彼もまた数々のバラシを経験しある意味、バラシの美学を知るもの。私が倒れても、きっと彼が奴へあだ討ちをしてくれると信じてやまない。そんな彼もさすがに最初にこの場所を見て一言。こんな場所で出るの?そんな化け物?そう、このトンガリを訪れる釣り人のほとんどがそう思うような場所であることは間違いない。

潮が動かないのは毎度のこと、そもそも、ここは、そんなにガンガンに良い潮が入る場所ではない。そんな中でも、魚はあたってくる・・しかもサバ。この外道に今日の釣りの見通しが暗くなる。しかし、こんな時は沖目をきっぱり諦めることできてかえって好都合。そう、この伊浜のトンガリの怪物は「際」に潜んでいるのだ。

際では、メジナが釣れだした。なかなかあたりもなく、苦労していたがようやく活性があがってきた。必ず来る・・・そろそろ奴は食ってくる!

そう言い聞かせながら衝撃に備える。しかし、やつは私をあざ笑うように、準備万端身構える私の仕掛けに以外にもあっさりと奴は食ってきた。ウキが吹っ飛ぶように消しこむ・・・予想の想定内。身構えながら糸をフリーにできる体勢であわせる!

一発目の走りは止まらない・・・止まるまで糸はフリーで出す。
これは前回の対戦で3回も玉砕した私の結論。想定内の衝撃が竿先を光速のスピードで海中へ引き込む。とっさにすべての抵抗を開放しフリーにする。指が引きちぎれるような勢いで道糸がはじけ飛ぶ。これも想定内。

予想通り、あいつは無抵抗の釣り人に呆れたようにあっさり走りをやめた。「こっからだ!!あいつの手口はすべて知っている!」ベールを起し、攻守交替!反撃の狼煙を上げるように竿を一気に引き起こす!驚いたあいつは、私のむなしい抵抗を楽しむようにいなす様に、いや・・期待を持たせるように、比較的おとなしくやり取りできるつかの間の猶予をくれる・・・・「獲れる!!」そう思った瞬間。

あいつは本来のパワーを見せ付けるように向きを変えて釣り人の主導権をむしり取る。むなしく折れ曲がる竿、耐える・・・耐える・・・風を切り裂き悲鳴を上げる道糸、それでも耐える・・・竿が折れる??そう思う心をかき消すが、あいつは釣り人のそんな強くもとうとする心を根元からへし折る。「だめだ・・・やられる!」負の心理が働いた瞬間、やつは全力で釣り人のその弱気を引き釣りだし海のそこへ消えていった。

こんなやり取りこそ・・メジナ釣りの醍醐味である。私は一匹の魚にこだわったり追い続けたことはない。しかし・・アイツには借りがある、私のキャリアーやプライドを剥ぎ取られたと言う借りがある・・・もう一度挑戦しよう。

こんな釣りができることって・・幸せです。どうですか??アイツにあってみたいと思いませんか??今もなお、あいつはあそこで待ってます。か弱き釣り人の心をへし折ることを待ち望みながら・・・・。